首里染織館suikaraのびんがたと首里織の魅力を訪ねて
2022.09.10
OKINAWA2022年4月、首里城からほど近い場所に、びんがたと首里織の新たな拠点「首里染織館suikara(しゅりそめおりかん すいから)」がオープンしました。琉球王国時代から受け継がれてきた伝統技法である、びんがたと首里織。その魅力を訪ねました。
美しく贅沢な展示に魅せられて
suikaraの建物に一歩足を踏み入れると、首里織とびんがたの着物コーディネートのディスプレイに迎えられます。一つ一つのコーディネートの素晴らしさ、そして丁寧な手作業から生まれた美しさはしばし見惚れてしまうほど。自分にはどの組み合わせが似合うかな、とそんな目線で展示ギャラリーを眺める人もきっと多いはず。
首里織もびんがたも、手作業でしか生み出すことができない、沖縄の伝統工芸。大量生産ができず、その多くは県外へと出荷され、全国で流通するため、これだけ多くの沖縄生まれの染め織りが一度に見られる場は他にありません。そうした意味でも、この展示ギャラリーは貴重で、特に着物愛好家の方々には好評なのだそうです。
首里から生まれた伝統工芸を広めたい
suikaraで染め織りを行っているのは、琉球びんがた事業協同組合と那覇伝統織物事業協同組合。それぞれ、2階、3階に工房があり、作業風景を間近に見ることができます。また、予約制で体験の受け入れも行っているとのこと。ここは、そうした作業風景を見てもらうことで、伝統工芸に興味を持ってもらうだけでなく、これからのびんがたと首里織の担い手の育成の場としての役割もあるそう。
2階のびんがた工房では、タイミングによっては「色差し」と呼ばれる布に色を差していく作業が見られることも。作業をされていたベテランの作家さんから、「紅(びん)」という言葉は、沖縄の方言で「色」の総称であること、そしてたくさんの色を使う型染めを「びんがた」、琉球藍を使い、その濃淡で染めるものを「藍型(いぇーがた/あいがた)」と呼んでいたことを教わりました。
3階の首里織の工房では、シャートントンという、機織り機の糸をすべらせ整える音が聞こえてきます。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の織りから浮かび上がる柄の美しさはぜひ間近で見てほしいもの。
また、工房横に展示されている首里織のファブリックボードは、見ているだけでも楽しくなる多彩さ。首里花倉織、首里花織、首里道屯織、首里絣、首里ミンサーと、技法の種類が多いのも、首里織の特徴の一つです。
もっと身近に、普段使いのものとして
びんがた、首里織それぞれの作家から生まれる美しい作品は、見るだけでなく、身近なものとして普段から使って欲しいからと、suikaraには扇子やペンケース、小銭入れや名刺入れなどの作品が販売されています。首里(すい)から生まれた誇りをまとい、凛とした美しさのあるアイテムは、持つ人の日々にきっと彩りを添えてくれるでしょう。