【よみもの】再生医療から生まれた化粧品が誕生 | 樂園百貨店

再生医療から生まれた化粧品が誕生

2022.03.28

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再生医療の研究現場から生まれた化粧品−COSME ACADEMIA(コスメ アカデミア)−。「治療レベルの化粧品」ともうたわれるこのコスメは、琉球大学医学部が再生医療の研究をする中から誕生しました。美容医療から発想を得た、効果が期待できるコスメアカデミアの秘密について、美容外科医であり琉球大学形成外科学教授の清水雄介先生に、お話をうかがいました。

コスメアカデミアのカギとなる「脂肪幹細胞」、「成長因子」とは?

コスメアカデミアが注目される理由の一つは、「脂肪幹細胞」由来のコスメであること。ところで、脂肪幹細胞とは一体…?

「『幹細胞化粧品』って聞いたことありませんか?一時、韓国から話題になった時期があったので、聞いたことがある人もいるかもしれません。そもそも、私たちの体は常に細胞が新しく生まれ変わっているんですが、皮膚が剥がれては新しい皮膚が生まれるように、人間の身体には新しく細胞を補充する能力があるんです。こうした能力を持つ細胞が、幹細胞です。僕は美容外科医で、脂肪吸引などの手術も行っていましたが、脂肪の中には、脂肪幹細胞という脂肪を成長させる細胞があります。脂肪幹細胞からは簡単にいうと体にとって良い成分を出すことが知られています」。

私は2016年3月に顔がへこんでしまった患者さんに、増やした脂肪幹細胞を移植する研究を日本で初めて実施しました。その研究の過程で、脂肪幹細胞が増えると同時に出てくる培養上清(ばいようじょうせい)と呼ばれる液体に、皮膚を新しくする作用がある「皮膚成長因子」や炎症を抑える「抗炎症」の作用がある成長因子がたくさん含まれていることが分かりました。

「人間の体は、常にいろんな炎症が起こっています。この炎症が老化の一番の原因。そのほかにも、ニギビや日焼けも炎症です。今回の研究で分かった成長因子は、こうした炎症を抑える作用があったんです。もともと人間の体の中では自然と炎症を抑える動きは行われていますが、それだけでは実は足りないので、補うための化粧品を作ってみようと、培養を進めることになりました」。

安全であること、そして自信を持ってすすめられる品質であること

「幹細胞化粧品の中でも、コスメアカデミアは『国産』で『ヒト由来』の幹細胞化粧品を初めて作ったと考えています。」と、清水先生。世の中にはさまざまな幹細胞化粧品がありますが、一番キーとなることは、幹細胞が誰のどんな組織に由来し、どのような過程を経て化粧品にされているのかに大きな違いがあるといいます。

「僕らが一番重視したのは、その安全性です。コスメアカデミアに使われているのは植物由来ではなく、ヒト由来のもの。ヒトの細胞に最適だと考えたからなんですね。そしてその細胞を使うために、本当に多くの検査をクリアして、しっかりとプロセスを踏んで製品として世の中に出せたと思います」。

製品化に至るまでには相当な数の厳正な検査が行われたとのこと。脂肪を提供してくださる方に関する倫理審査に始まり、ドナースクリーニング、GMP準拠設備、劇物・毒物の除去、滅菌処理、マイコプラズマ・HIV否定試験…。化粧品の法令基準以上の安全性を求め、品質へのこだわりを徹底したのは、国立大学の再生医療研究の中で生まれ、その効果も自信が持てるものだったからこそ。煩雑とも言えるほどの検査をすべて合格し、コスメアカデミアは完成しました。

医療よりも、もっと広く身近に使えるように

代表取締役を務める奥田さんは、「初めは原料の安定供給や作業量の多さなど、いろいろと大変でした。その中でも細胞の培養が一番大変だったかもしれません。細胞がどうやったら育つかの最適化ができなくて、培養の技術を確立させるまでが一番苦労しましたね」と。
現在は技術が確立したこともあり製造部分は安定しましたが、より良い効果を得るために、現在も研究を継続中だといいます。

「僕は外科医なのですが、脂肪幹細胞の研究に携わるようになって、人の健康を保つために、病気の人だけではなくて、予防をしたい人などにも役立つものが作れたらという考えがでてきました。将来的には医薬品など、病気の患者さんに使えるものまで開発できたらいいなとは思いますが、その前提として、一般の方に広く使えるものをと思って化粧品を作ることにしたんです」

コスメアカデミアを使った人たちの声を聞くと、そのほとんどがポジティブなもの。リピート率もかなり高く、そうした反応は、清水先生たち自身も驚かせるほどでした。医療行為でしか使われることのなかったヒトの身体から採取した成分を、一般の人も使える化粧品として開発されたコスメアカデミア。その反響は、今後ますます広がっていきそうです。

コスメアカデミア

美容外科医であり琉球大学形成外科学教授の清水雄介先生が設立した琉球大学初のベンチャー企業、株式会社Grancell(グランセル)の化粧品ブランド。清水先生は2015年に慶應義塾大学から琉球大学へ教授として赴任。脂肪幹細胞の研究に携わり、2017年に脂肪幹細胞由来のコスメ開発および製造のために会社を設立。商品ラインナップはローション、エッセンス、セラムマスクなど。