【よみもの】優しく甘い香りの石垣島生まれのバニラに恋して | 樂園百貨店

優しく甘い香りの石垣島生まれのバニラに恋して

2022.03.09

FOOD

アイスクリームやカスタードクリームなど、スイーツに欠かせない「バニラ」。多くの人の心をとらえる、うっとりするような甘い香りはとても魅惑的です。バニラは暖かな地域で育つラン科の植物で、産地として有名なのはマダガスカルやインドネシアなど。それがここ沖縄の石垣島から、8年の時をかけて栽培から商品化を実現させた「ChulaSya ishigakijima vanilla」(ちゅらしゃ 石垣島バニラ)が生まれました。

「バニラを育てるって面白そう!」始まりは好奇心から

「ChulaSya ishigakijima vanilla」は、バニラビーンズをはじめ、手軽に使えるバニラシュガーやバニラエキストラクト(エッセンス)などのアイテムが揃う、石垣島生まれのバニラのブランド。これらの商品を手がけているのは、未経験からバニラの栽培を始めた金城美沙江さんです。

「バニラの栽培が初めてというか、農業をやること自体が初めてだったんです。以前はインテリアや大工の仕事をしていましたが、出産を機に手に職をつけたくてエステの資格を取ったりして。その後、両親が農業をやり始めたので少し手伝ったら『農業って面白いかも』と思い始めて、そんな時にたまたま講習会で知ったのがバニラだったんです。農業をやるにしても、何か人とは違うことをやってみたいなって思っていたから『これだ!』って思って。講習会のおみやげでバニラの苗を一鉢もらったけど、その足で、苗を育てたと聞いた農林高校へ行って100鉢注文してきました(笑)」。

驚くような行動力でバニラ栽培をスタートさせた金城さん。初めてだったけれど、意外にも栽培すること自体はさほど難しくはなかったとのこと。

「あれ?バニラってすごく順調に育つけど、なんでみんなやらないの?って思うくらい(笑)。石垣がバニラを育てるのに合った気候だったということもあるかもしれないけど、栽培はかなり順調でした。でも、受粉の時期は大変。花は4〜5時間しか咲かないから、少しでも多くの実を収穫できるように、私は一つ一つの花に手作業で受粉するんです」。笑いながらそう話す金城さんだけれど、その労力はかなりのもの。1年に1回しか収穫できないバニラだからこそ、開花の時期である4月中旬から5月、金城さんは朝早くから受粉作業に明け暮れます。

こうして手塩にかけて育てたバニラですが、収穫は決してゴールではなく、折り返し地点。甘い香りのバニラになるには、その後の作業が重要なのです。

花も実もバニラの香りはない。香りの鍵は「キュアリング」

金城さんはバニラを育てるようになってから、たくさんの人から「ハウスの中はさぞかし甘い香りでいっぱいなんだろうねー」と言われたそう。でも、バニラの花も実も「野菜っぽいかも(笑)」と、金城さん。言われなければ、育てているものがバニラだとはわからないほど、あのバニラ特有の甘い香りはまったくとのこと。では、一体どうやったらあの香りは生まれるのでしょう。

「バニラは花が咲いた後に、さやができるんです。そのさやを発酵と乾燥を繰り返してバニラビーンズにするんですね。この工程をキュアリングというんですが、その時になると香りがしてきます。野菜みたいなさやがキュアリングすることでこんなに甘い香りになるなんて、初めてキュアリングを考えた人って本当にすごいって思います」と話す金城さん。

このキュアリングという作業が大きなハードルだったとのこと。乾燥させすぎてもいけないし、水分量が多すぎてもいけない。「もう、ずっと実験でしたね」と金城さんが言うように、キュアリングに関する海外の文献を読み漁り、YouTubeで調べ、できる限りの方法を試しながら、一歩一歩、金城さんはその技術を確立させていきました。そして、遂に商品として出せるバニラビーンズができたのは、栽培を始めてから8年後のことでした。

バニラの本当の香りを知って欲しくて

「ChulaSya ishigakijima vanilla」のバニラビーンズを初めて使った人から、「一般的なバニラに比べて香りがやわらかい」という意見をよく聞くという金城さん。実は、市販されているバニラのほとんどが、人工的に作られた合成香料なのです。

「甘くて強い合成香料のバニラの香りに慣れていると、石垣島バニラは香りが弱いと感じるかもしれません。でも、これが本当のバニラの香りなんです。そのことをもっと多くの人に知ってほしくて、バニラビーンズはもちろん、より使いやすいバニラシュガーやエクストラクト(エッセンス)も商品として作りました」と、金城さんは話してくれました。

バニラの香りがもっとも感じられるのは、バニラビーンズのさや。温めることで甘い香りが立つようになります。ホットミルクを温めるときに、鍋にさやを一緒に入れて少し煮出せば甘い香りが楽しめます。パンケーキを作るときにバニラシュガーを入れてみたり、紅茶やコーヒーにバニラエキストラクトを数滴垂らしてみたり。バニラそのものに甘みはありませんが、香りの甘さで満足できるため、リラックス効果やダイエット効果も期待できるそう。人工的に作られたものではなく、天然の恵みとして楽しめる石垣島のバニラ。その優しい甘い香りをぜひ味わってください。

石垣島バニラ

2012年開業。沖縄県産初となる天然のバニラビーンズを栽培から加工、販売まで一貫して行っている。開花の時期は4〜5時間の開花時間に手作業で受粉作業を行い、発酵と乾燥を繰り返してバニラビーンズにする「キュアリング」という工程も、経験をもとに手作業で行うなど、手間を惜しまない。バニラ栽培に挑戦し8年目で商品化に成功。「ChulaSya ishigakijima vanilla」のブランド名で販売。