【よみもの】天然の甘みにうっとり。黄金芋スイーツ | 樂園百貨店

天然の甘みにうっとり。黄金芋スイーツ

2021.06.29

FOOD

黄金芋と書いて、おうごんいも、くがにいもと読むお芋を知っていますか?産地として知られているのは、沖縄のうるま市伊計島。黄金芋の名前の通り、お芋を割ってみると輝くような濃い黄色をしていて、甘みが強いのが特徴です。そんな黄金芋をふんだんに使ったスイーツを、その作り手さんの想いも含めて紹介します。

黄金芋との出会いからすべてが始まった「黄金茶屋」

ねっとりとした食感、高い糖度、そして見る人を驚かせるほどの鮮やかな黄色。黄金芋に魅せられて生産者になったのは、うるま市与那城で黄金芋のお店「黄金茶屋」を営む村田孔彦さんです。かつては神奈川県でメーカー勤めをしていた村田さんは、退職後は妻の実家があるうるま市へ移住し、農業をやろうと考えていたといいます。当時は育てる農作物はまだ決めていなかったといいますが、移住前に何度か沖縄を訪れる中で、ある時、農家をしている義兄が育てた黄金芋を食べる機会があったとのこと。

「黄金芋の焼き芋を食べさせてくれたんですが、まずその色にびっくりしました。とても鮮やかな黄色できれいなんですね。そして食べた時のねっとりとした感じがとてもおいしかったのと、何よりもとても甘かった。それで、この芋を作りたいと思ったんです」

そこで村田さんは沖縄へ移住後、1,000坪の農地を手に入れて黄金芋づくりを始めました。

栽培を始めた1年目は問題なく収穫ができたものの、2年目を迎えると、思わぬ問題が起こりました。

「掘ってみたら芋がぜんぶ割れているんです。これは困ったと思って。原因を探ってみると、芋というのは日照りが続いた後に急に雨が降ると急成長することが分かりました。急に成長すると、そのスピードのせいで芋がはじけてしまうんですね。味は問題なくておいしいんですが、これでは売り物にならない。しかもはじけた芋を放っておくわけにはいかなくて、収穫して土をならさないと、次のものを植えることができない。仕方がないので、知り合いの養豚をしている方に飼料としてあげていました。ただ、量がかなりあったことと、味自体は問題がなかったのでどうにかできないかと考えて、加工用に使うことにしました」。

村田さんが加工品を作るうえで最も大切にしたのは、黄金芋のおいしさがダイレクトに伝わるものにするということ。そして、黄金芋を贅沢に、たっぷりと使った加工品にするということでした。

「加工品は少量入っているものに対しても『黄金芋使用』と言うことができますが、私は農家なのでやっぱり黄金芋を主役にしたかったんですね。だから黄金茶屋のスイーツには黄金芋をふんだんに使っています」。

初めて作った加工品は、奥様と一緒に考えた「まんじゅう」だったとのこと。イベントで出してみたら予想を超えるほどの評判となったため、店舗を構え、それと同時に息子さんも県外から移住し、家族で黄金芋を栽培し加工商品の製造販売に本格的に取り組むようになったといいます。そこからは、スティック状で歯応えのいい「いもぽき」や、同じうるま市で黄金芋を飼料に養鶏をしている徳森養鶏場の卵を使った「うるまの金プリン」など、次々と新商品を開発。沖縄県の「島ふ〜どグランプリ」で最優秀賞、「美らスイートポテトタルト」が観光庁が後援する全国推奨観光土産品審査会でも表彰されるなど、村田さん一家が考えた黄金芋のスイーツはたくさんの賞を受賞しました。

「黄金芋はそのままが一番おいしいと思うので、本当は焼き芋で食べてみてほしいんですね。芋は虫がつくので、一般的には少し早めに収穫をして出荷することが多いんですが、私たちは糖度が上がるギリギリのところまで待って収穫します。もし虫が入っても、農家であり菓子製造者でもある自分たちなら、その部分を削って加工品にすることができるので。この強みをいかして、これからも黄金芋のおいしさを伝えていきたいですね」。

パン屋「BOULANGERIE CAFE yamashita」が作る本物のラスク

とにかくいい素材を使って手間を惜しまないこと。これは、ブーランジェリーカフェヤマシタを一人で切り盛りする幸地美恵子さんの一番のこだわりです。うるま市の美しい海に連なる4つの島の一つ、平安座島(へんざじま)にお店を構え、地元の特産であるもずくや津堅ニンジンなどを使ったパンを作ってきました。

幸地さんの頭の中は「こんなものを作ってみたい」「この組み合わせはきっとおいしくなる」と、いつでもおいしいアイデアでいっぱい。新たな素材に出会ったときにはその想像力が大いに働き、いろんなパンを作ってみたくなるといいます。そんな幸地さんが黄金芋を使ったパンを作ろうと思った時、真っ先に考えたのがメロンパンでした。

「メロンパンって私の中では夢というかロマンを感じるパンなんですね。他のパンとは少し違う、憧れの存在という感じ。黄金芋のことは、その名前は知らなかったけれど、ねっとりとしていて甘くてやわらかい、おいしいお芋だなというのはあって。どことなく懐かしい、記憶に残っている味でしたね。それでメロンパンといえば黄色でしょう?黄金芋の色と結びついて、これは作るしかないって」。

それまでもお店では数種類のメロンパンを出していたものの、黄金芋を使うと決めたらそれ一本に絞ることに決めたという幸地さん。そして大人も子どもも、アレルギーのあるなしにも関わらず、みんながおいしいと思うものを作りたいと、卵や牛乳を使わずにメロンパンを完成させました。おかげで今ではお店の売り上げナンバー3に入るほどの人気になりました。

そしてもう一つ、黄金芋との出会いから実現したのが、お店オリジナルの特産品である「黄金芋のラスク」。パン屋ならではのお土産を作りたいと常々考えていた幸地さん。保存がきくラスクはお土産にいいのはもちろん、作るならどこにも負けないものをと取り組み始めたといいます。

ラスクのベースとなるバゲット生地は、オープン当時からのお店の看板商品である「平安座バゲット」を使用。小麦粉と塩と水だけで作られるバゲットはお店の腕が試されると言えるほどのもの。幸地さんはフランスの最高級の小麦粉を使ってこのバゲットを作っています。 そしてラスクに塗っているのが自家製の黄金芋のペースト。黄金芋を潰して濾し、バターを贅沢に使って一から手作りしたものです。ラスクはもともとパンを乾燥させて作るため、そのための時間がかかりますが、水分量の多い黄金芋を使うとその工程にさらに時間が必要になるとのこと。かと言ってオーブンの火力を強くすると黄金芋のきれいな黄色が損なわれてしまうため、幸地さんは低温で時間をかけてラスクを仕上げます。

「ぜんぶ手作りだから、手間が本当にかかっているの。でも、どこも省いたりしようなんて思わない。だって、おいしいことが一番でしょう。みんなが飽きずに食べられて、また買って帰ろうと思うものじゃなくちゃ。性分かもしれないけど、いい素材を使って手間をかけて作るものでないと、私がやる意味はないから」。

幸地さんのプライドとも言える想いが込められた黄金芋のラスクは、中国圏をはじめとする海外からの観光客からも人気になり、中には何袋もまとめ買いをしていく人もいるそう。そのおいしさは世界にも広がりつつあります。

多くの人がおいしいと思う黄金芋と、そのおいしさを広めようとする人の想いから生まれる絶品スイーツ。ぜひ食べてみてください。

樂園百貨店

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