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2018.02.28

PEOPLE

「幸せのタネ」が教えてくれる、小さなきっかけを積み重ねることの大切さ

うっかり気付かずに通り過ぎてしまいそうな、些細な人生のきっかけ。それを「幸せのタネ」として、子どもも大人も楽しめる一冊の絵本に表現した、新城 暖(だん)さん。ショップオーナー、プロデューサー、イラストレーター、絵本作家と幅広い活動を行う新城さんが、ご自身の経験を通して気づいた地元沖縄ならではの魅力、そして小さなきっかけを積み重ねて今に繋げることの大切さ。安里駅近くの蔡温(さいおん)ストリートにある新城さんのショップ『Plant & Soil』でお話を伺いました。

沖縄に上質なライフスタイル根付かせるための、苗と土

−ショップ名の『Plant & Soil』というのは、どういう意味なのでしょうか?

Plantは苗、Soilは土壌を表しています。この店を通じて沖縄に洗練された上質なライフスタイルを根付かせていくことを目標としていて、その「根」を生やすためには、まず土壌、基盤を作ることが大事だと思っています。しっかりと基盤を整えて苗を植え、根を張り、いずれ花を咲かせたい。そんな思いを込めて名付けました。

今の時代、ファッションというのは洋服だけではないと思うんですね。たとえば香水がファッションになったり、食卓に飾るお花やその花瓶だってファッションになったり。衣食住すべてを含めた、面白いものを提案できればと思っています。

メインは洋服なんですが、沖縄の伝統工芸にも力を入れていて、壺屋焼きの窯元、育陶園さんとコラボレーションして香炉を開発したり、蝶ネクタイのブランドHABERUさんと「うらそえ織」でシルクのボウタイを作ったり。それから店内では県産の名護珈琲もお出ししていて、これもすごく人気があるんです。

ただ単に「かっこいい洋服がありますよ」という提案だけではなく、伝統工芸や沖縄のいいものを、いかにして若い世代に伝えていけるか、というところをいつも意識しています。伝統工芸っていうとちょっと堅苦しいイメージがあると思うんですが、ファッションというフィルターを通すことでそのイメージが取り払われて、本当の良さや面白みを感じてもらえるんじゃないかな、と思っているんです。

東京での生活を通じて高まった故郷沖縄への想い

―八重山諸島の西表島ご出身だと伺いましたが、その頃からファッションがお好きだったのでしょうか。

そうですね。田舎で何もない島でしたが、僕の兄がすごく洋服好きだったので、その影響が大きいと思います。初めてデニムを履いたときの驚きというか高揚感みたいなものが忘れられなくて、その頃から将来はファッション関係の仕事につきたいと思っていましたね。父方の実家が那覇にあるので、夏休みとかになったら那覇に来ては、好きなお店で洋服を買ったり見て回ったりしていました。

大学進学を機に東京で生活を始めたんですが、東京はさらにアートだったり音楽だったりファッションだったり、全てにおいてとても刺激的な場所でした。でもその刺激を感じれば感じるほど、地元沖縄にもこういった都会のライフスタイルだったり面白いことだったりを増やして、盛り上げていきたいという気持ちが湧いてきて。入学当初から、いずれは沖縄に戻ろうと考えていました。

―当時から、地元沖縄の工芸品だったり伝統文化だったりに興味を持たれていたのですか。

いえ、大学卒業後はそのまま東京で働いていたんですが、あるとき沖縄の工芸品やブランドを集めた展示会のディレクションをさせていただく機会があったんです。そこで、琉球藍だったり、やちむんだったり、沖縄にはこんなに素敵な工芸品があるんだ!ということに改めて気づいたというか。これは多くの人に知ってもらわなきゃいけないと強く感じたんです。素晴らしい作家さん達と繋がりを持てたことも大きかったですね。それが、今のこのショップのスタイルに繋がっているのかなと思います。

アートとして、大人も子どもも楽しめる絵本を

―絵本『アゴリタおじさんの幸せのタネ』がうまれたきっかけについて聞かせてください。

僕の母親が西表島で幼稚園の先生をしていた影響もあり、小さい頃からずっと身の周りに絵本がありました。なかでもエリック・カールの『はらぺこあおむし』だったりトミー・アンゲラーの『すてきな三にんぐみ』だったり、いわゆるロングセラーの絵本が好きでよく読んでいましたね。
絵本って“子どものもの”と思われがちなんですが、海外ではアートのひとつとして捉えられていたりするんです。日本でアートというとなんとなく敷居が高くなっちゃうんですけど、もっと気軽に楽しめるアートとして、大人も手に取りたくなるような絵本があったらいいなと思って描き始めました。

実はこの絵本は二作目で、一作目は『LIFE OF MR.DONK』というウイスキー飲みのおじさんが主人公の大人向けのストーリーだったんです。それから一年ぐらい経って、自分に子どもができたタイミングで完成したのが、この『アゴリタおじさんの幸せのタネ』。大学の頃から、自分の子どもに読み聞かせる絵本として構想があって、すでにストーリーも完成していたんです。でも、そのメモをなくしてしまって……。そのまましばらく年月が経ってしまったのですが、結婚して引っ越しをするときに、そのメモがひょっこり出てきたんです。そんなわけで、構想から10年以上経って、ようやく世に出せた作品なんです。

この絵本は「人生のきっかけ」というのをテーマにしていて、些細な事をきっかけに生活が大きく変わったり、いろんなチャンスに出会ったり。目に見えないけど、毎日どこかにきっかけは転がっているんだよ、というメッセージを込めています。そのきっかけを可視化したものが「幸せのタネ」。タネはやがて苗になり、そして花が咲くんだ、ということを伝えられたらと思っています。
絵本のなかで、最初は頑なだったアゴリタおじさんの心が、タネを通じてたくさんの人々と心を通わせ豊かになっていくんですが、ストーリーにあわせて絵の色もモノクロからだんだんカラーに変わっていくんです。そこも是非見ていただければ。

僕も学生時代にいろんな方に出会ってたくさん助言をいただいて、小さなきっかけを積み重ねて今があるので、この本を読んでくれた人がなにかのきっかけを掴んで、人生の新しい一歩になれば嬉しいです。
自分の子どもが大きくなったときには、僕がこの絵本を作れたように、続けていれば、念ずれば、きっと夢は叶うんだよ、ということを伝えたいですね。

沖縄の素晴らしい伝統工芸を、世界へと

―今後はどういった展開を考えていますか?

僕は本当に沖縄が大好きなので、今後も沖縄の伝統工芸や沖縄に暮らしている作家のみなさんと僕たちとで化学反応を起こして、素敵なプロダクトを作っていけたらなと考えています。これまでも琉球藍だったり、やちむんだったりいろいろやってきましたが、まだまだ表現したいものがたくさんあるんです。
もちろん主体としてはファッションなので、国内外の素敵なブランドを紹介しながらも、沖縄のみなさんが改めて地元に対して誇りが持てるようなプロジェクトをどんどん進めていきたいです。そして県内外、はたまた海外からも、沖縄ってすごいな、面白いな、って思ってもらえるような取り組みを、ここから発信していけたらと思っています。

―絵本についても、三作目の構想があったりするのでしょうか

時期は全く未定なんですけど、実は父が僕の絵本を読んで「自分の方が面白いのを書けるぞ!」と言ってまして…。もしかしたら近いうちに僕が絵を描いて父がストーリーを書く、という親子共同作品が生まれるかもしれません。僕としても、親子で本を作るっていうのは新しい試みなので面白いなと思っていて、少しずつ準備をはじめているところです。それをまた自分の子どもに読み伝えていけたら、こんな素敵なことって無いですよね。

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