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2019.01.25

PEOPLE

ひとつひとつ違った個性を染めあげる。やさしく美しい、植物の色。

木と花、と書いて『木bocca花(ボッカ)』。悠々として、どこかオリエンタルな響きを感じるその沖縄のファッションブランドは、植物からインスピレーションを受けて始まりました。ブランドを立ち上げ、現在では商品の企画からデザイン、染めまでを行っている大林 千乃(おおばやし ちの)さんにお話を伺いました。

肌触りや、素材感を大切に。南国の植物を身にまとう。

―『木bocca花』は、植物の蔦を思わせるようなテキスタイルや、ストールなどの鮮やかな色合いがとても印象的ですが、ブランドが誕生するまでのお話をお伺いできますか?

実は、元々は家業として沖縄市にある植物園の経営をしていました。でも施設というのは、基本的には人が来るのを待つだけ。そこで、なにか軸となるような事業を、植物と関連性のあるものでできないか、と考えて立ち上げたのが『木bocca花』だったんです。たとえば、植物にまつわるストーリーを込めたファブリックを洋服やバッグに仕立てることで、持ち歩くことができるようになりますよね。それが植物園の宣伝にも繋がってくる、というところからスタートしました。2005年のことですね。

―そうだったんですね。大林さんは元々、ファッションデザインのお仕事などもされていたのでしょうか?

いえ、そういうわけではなかったのですが、もともと洋服がとても好きだったんですね。自分が持っている洋服のなかで、どういったものが着やすいのか、長く持っていたいと思うのか、というのが経験上分かっていたので、その構想をデザイナーに伝えてデザインをお願いしていました。私の役割はデザイナーというよりも、コーディネーターと言ったほうが近いと思います。

あとは、ブランドをとおして若手を“育てる”というのもひとつのキーワードだったんです。いちばんの基本は、植物と一緒です。放っておいたらちゃんと成長しない。たとえば、アートは自己表現であって、自己満足で終わってしまう部分がある。でも、ブランドを立ち上げるということは、そこに商品価値があるのか?マーケットでお客さまにどう捉えられるか?という部分まで考えないといけないですよね。若いアーティストにとって、その経験から学ぶことも多かったんじゃないかと思います。

―植物を育むように、『木bocca花』というブランドも成長してきたんですね。そして現在では、大林さんご自身で“染め”を行うようになったと伺いました。

そうなんです。現在では植物園から事業が完全に離れまして、5〜6年前ぐらいからは、“染め”をはじめ、洋服の企画からデザインまで全部自分でやるようになりました。でも、最初から意識している“着やすさ”という部分は変わっていなくて。肌触りや素材感、そういったものがブランドのとても大事な要素になっています。

印花布の歴史を繋ぐ。持続可能な仕組みづくりを。

−『木bocca花』の洋服の素材には、どういったものを使用されているのでしょうか?

基本的には天然素材を使っていて、綿が主流ですね。あとは、麻やシルクも。最近は環境の変化もあってか、肌がかぶれやすい方や、アトピー、アレルギーの方も増えていますよね。
もちろん100%ではないですし人にもよりますけど、天然の素材なら安心して身につけることができる、という声をよく耳にします。それから色も天然の色を使っています。化学的な色と違って控えめだけど、自然のものならではの美しさがあるんです。顔料と染料の違いですね。

また最近ときどき使うものに、“エコ染め”というのがあります。たとえば、ペットボトルをリサイクルした繊維を使ったものなんかがそうですね。
紡績って、製造工程のなかでたくさん水を使うんです。水を使うことで、電気や人件費のコストもかさんでしまう。でも、このエコ素材なら、水を使う回数を減らすことができるんです。電気も、人の手をかける時間も少なく。全体を通して“エコ”の考え方で作られている、最近はそういう素材も使うようになっています。肌触りも、ニットのような感じでサラッとしていて気持ちいいんですよ。

―時代の変化にあわせて、使用する素材も少しずつ変化してきているのですね。

そうですね。でも、コンセプトはずっと変わらず続いている感じです。
今、自分で藍染めや草木染めをするなかで、やっぱり植物の、自然の偉大さを感じることが多いんです。果実を美味しく頂き、葉っぱから染料を抽出して、身につけて楽しむ。植物の恵みを最大限に使っていくというのが、感謝のかたちなんじゃないかなと思うんです。

同じ種類の植物でも、葉を取る木が違えば色合いが変わってくる。外からは同じように見えても、DNAはみんな違うんですね。それって人間と一緒じゃないですか。だから植物ってすごく面白いですよ。
いろんな植物の色を、もっともっと見てみたい。当然、失敗もたくさんあるけれども、時間をかけて追求していきたいなと思っています。

―植物も人と同じで、それぞれ個性があるんですね。『木bocca花』には、あまり耳慣れない『印花布(いんかふ)』のアイテムがありますが、印花布とは一体どのようなものなのでしょうか?

中国の伝統的な藍染め技術で作られた、型染め布のことです。600年ぐらいの歴史があるもので、昔は“もんぺ”や、兵隊の服として、また嫁入り道具としてもたせる布団におめでたい柄を染めたりしていたそうですよ。沖縄の紅型のルーツになったとも言われていますね。

紅型は、型枠の染めたくない部分に糊を置いていくときに、でんぷんで作った糊を使って染めた後に水で洗い流すのですが、印花布は大豆で作った糊を分厚く塗って最後に包丁で削って取り除くんです。だから、できあがった印花布をよく見ると、白く染め残った部分に立体感が出ているのが分かると思います。

−大林さんは、どのようなきっかけで、印花布に出会ったのですか?

実は、印花布も世界中の工芸と共通するように“後継者がいない”という問題に直面していたそうです。それを友人から聞いて、応援してみませんか?と声をかけてもらったんです。そういうことなら!と引き受けて、私はストーリーを作って、デザインをして、製品化して。歴史を繋ぐ、そういう気持ちを込めてね。売れれば売れるほど、作り手が儲かって持続できるように。
持続できなければ、どんなに伝統があって素晴らしいものでも、消えていってしまうんですよね。使う人がいなくなれば、作る人もいなくなる。だから、伝統や作り手を“守る”ためには、使うこと、消費することが大事なんです。

人生は一枚の布から。ストールで何通りもの着こなしを楽しんで。

−今日の大林さんの着こなしは、とても素敵ですね。『木bocca花』のアイテムを使ったおすすめのコーディネートや着こなしがあれば教えてください。

ストールは、とってもおすすめです。私がいつも言っているのが「ストールは、一枚の服」ということ。たとえば1着の服でもストールを3枚持っていれば、1+3で4枚の服になるんです。綿や麻のカジュアルな洋服やシンプルなワンピースでも、シルク系のストールを持ってくるとパーティーでもいける。
洋服をたくさん持っていなくても、ストール1枚でまったく違うものに見えるんです。

それから旅行するときにもとても便利。洋服で荷物がかさばるのって嫌じゃないですか。だから、お洋服は基本色の2〜3枚だけ持っていって、あとはストールを数枚持っていけば長期旅行でも着こなしに変化がつけられるんです。かさばらないし、シワも気にならないし。冬場であれば二枚重ねて使ってもいいし、女性は下半身が冷えやすいので、巻きスカートみたいに巻いてもいいですね。

―ストールはぱっと鮮やかな色合いのものから、落ち着いた自然な色合いのものまでありますよね。素材や織り模様にもバリエーションがあり、どれを選ぼうか悩んでしまいます。

ぜひ、楽しみながら選んでほしいです。私がストールをデザインするときにいつも意識しているのは、顔まわりに明るい色を持ってくること。そのほうが、表情が明るく見えるんですね。だからグラデーションに染めて、色の変化をつけることも多いです。
着心地や、肌触り、価値のある良い素材だけを使うこと。私、けっこうこだわるタイプなんです(笑)

どんな赤ちゃんも、お母さんのお腹から出てきたら最初に布で包まれるでしょ。人生は、“一枚の布”から始まっているんです。布って、私たちにとってすごく身近な存在で、ストールは、まさに“一枚の布”ですよね。だからこそ、着こなしにも取り入れやすいのかなと思います。

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