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2018.09.07

PEOPLE

透明なものへの憧れを突き詰めて。独創的で大らかなガラスワーク

幼い頃から抱き続けてきた「透明なもの」への憧れと、尽きることのない探究心。ガラスという素材が作り出す美しさを、作品を通じて伝えたいと活動しているガラス作家の比嘉奈津子さん。世界のどこにも無いような、独創的で大らかな作風は、奈津子さんのキャラクターそのものです。
名護市にある、夫の大陸さんが営むレストラン『ENTRO SOUP & TAPAS』でお話を伺いました。

「一生をかけられる」と感じた、透明な素材

− 表現方法としてガラスを選ばれたのは、どのようなことがきっかけになったのでしょうか。

小さい頃から、ガラスに限らず「透明なもの」に興味があったんです。そこに確実にものがあるのに、なんで向こう側が見えるんだろう?って。ペットボトルがあったらラベルをはがして水を入れて、寝転がってずっと眺めているような子どもでした。見る角度を変えると、景色がゆがんだりするのが不思議でたまらなくて、今思えばその頃から「透明なもの」に魅了されていたんだと思います。
そこから、ガラスってどうやって作っているんだろう?と思うようになり、舞台裏を見てみたいという好奇心から、じゃあガラス作りをやってみようと。

もともと定年の無い仕事というか、手に職をつけたいと思っていたので、ガラスと出会うことで、ものづくりに繋がっていきました。

ガラスって、光の透過具合でまったく違った表情になるんです。たとえば窓辺に置いたとき、一日のうちでも光が差し込む角度や色合い、そこから生まれる影の出方でまったく印象が違って見えるんですよ。ガラスだと「時間」も表現のひとつになるんだと思ったときに「ああ、これは一生かけられるな!」って感じて。それが、今でも続いているんです。

「沖縄らしさ」をウリにしないこと

− 沖縄は伝統工芸品の「琉球ガラス」が有名なので工房もたくさんありますが、あえて県外の大学で学ぶことを選ばれたのは、なぜですか?

高校卒業当初はガラス工房を聖域のように感じていたので、いきなり入って働けるなんて考えられなかったんです。選択肢になくて。まずは、ガラス作りとはどんな世界なのか、どういう手法があるのか、世界にはどんなガラスがあるのか、ということを知りたかったので「工房」ではなく「学校」を探しました。
それに、学校は失敗から学べる場所だから、職業にする前にここで沢山失敗を経験しておきたいという考えもありました。

− 卒業後は沖縄に戻らず、そのままガラス作家としての活動をスタートされたのですね。

4年間学んだわけですが、まだまだ学びたい!まだまだ足りない!と感じていて。
ひとつの企業や工房に入って日々研鑽を続る「職人」という道に、作り手として憧れもありました。ただ私の場合、見たことないモノをもっと見に行きたいという気持ちが何よりも強くて。一つの場所にとどまらず、各地で実際に体感することで学んでいこうと考えたんです。
それで、創作や研究したことをカタチにおこす「作家」の道を選びました。

神奈川県では、現代ガラス界を代表する作家の伊藤賢治さんの工房で、細かな装飾や技術などを学びました。技術を言語化して生徒に教えることを実践している工房だったので、学ぶ側としてはもちろん、講師補助をさせてもらう際には「教える側の視点」を経験することができました。この経験から学んだことも大きかったですね。

− その後、沖縄に戻り旦那さまは『ENTRO SOUP & TAPAS』というレストランを、比嘉さんは工房を立ち上げられたんですね。沖縄にはいつか戻ろうと思っていたのですか?

実は、私自身は沖縄でやることに強いこだわりがあって戻ったわけではなかったんです。夫とは同じ地元の同級生なんですが、学生当時はほとんど喋った記憶がなくて(笑)。お互い関東で働いているときに、偶然再会しました。
「ガラスをもっと身近に感じてもらいたい」という話をしたら、「料理をのせたりして、実際に使ってもらうのが一番かもね」とアドバイスをくれて。そのとき彼は銀座で料理の修行をしていたので、これから協力しあっていこう、と意気投合したんです。

その後、お世話になった沖縄の方に恩返しをするため地元でお店をやりたいという彼に引っ張ってもらうかたちで、沖縄に帰ってきました。

でも、それが結果的にすごく良かったんです。全国いろんな場所で働いてみて、地域性というか、モノに対してどういう価値観をもっているのかを肌で感じる機会が多かったんですが、そのなかでも沖縄は古かろうが新しかろうが、見たことがないようなものでも面白がってくれる。純粋に見てくれる方が多いなと感じました。

そういう方たちに勇気をもらって、すごく助けられています。生かされているな、とも感じます。

− 比嘉さんの作品は、良い意味で「沖縄っぽさ」を感じないのですが、作品づくりにおいてどんなことを意識されているのでしょうか?

沖縄が好きだからこそ、逆に沖縄をウリにしたくない、商業的にしたくないという意識が自分の中にありますね。もちろん拠点としてはとてもいい場所です。ただ私が伝えたいのは「沖縄」じゃなくて、ガラスという「素材」の面白さ、なんです。

作品作りで意識しているのは、機能性を持つものと、持たないもの、どちらも作り続ける事です。機能性を中心に考えるとカタチがある程度限定されます。そのぶん、生活にはなじみます。でも、機能性とは対極にある危うく儚いモノには、緊張感の中に美しさも存在しているんです。そんな作品も、やっぱり作り続けていきたいですね。

ガラスって、作っているときは熱くて柔らかくて、躍動感もあって本当にきれいなんです。
ガラスと向き合うなかで感じる美しさをなるべくそのまま作品で表現したい。生活のなかで観たり触れたり感じたりする日常に溶け込む美術品のような存在として、落とし込んでいきたいと思っています。

ガラスを日常に取り込んで楽しむアイデア

−比嘉さんの作品は、”日常で使いながら楽しめる美術品”という側面もあると思うのですが、どんなふうに生活に取り入れるといいでしょうか?

お店で料理の器として提供しているので、実際に触っていただいて、自宅においたときのイメージを膨らませてもらえるといいかなと思います。なかにはちょっと使いにくいモノもあったりもするんですが、そういうアイテムもアトラクション感覚で楽しんでもらえると嬉しいです。

使い方は、もうどうぞご自由に!(笑)。
私が思ってもみないことになっていてほしいなと思っています。たとえばコップに土を入れて植物を育ててもいいですし、ベタ(闘魚)を飼ってもいいし。みなさんアイデアがすごくて、こんなふうに使っているよと写真を送っていただく事がありますが、新しい発見がありますね。それぞれの想像力で世界がどんどん広がっていくのが楽しいので、私のほうからは使い方を限定したくないんです。

−樂園百貨店リフレッシュオープンに合わせて制作いただいたアイテムは、どういうシーンで使うことをイメージされましたか?

今回はグラスとボウルと花器を制作させていただいたのですが、“使っているときも戸棚にしまっているときも絵になる”というのをコンセプトにしています。

朝、目が覚めてキッチンに行ったとき、戸棚の中にあるやさしい色が目に映る。それだけで、やさしい気持ちで一日をスタートできるんじゃないかな、と。淡い乳白色を使って仕上げ、「柔らかい色」が際立つようにあえてシャープなラインのシルエットにもこだわりました。

今回つくったアイテムも、使う人の日常に自然と溶け込みながら、生活のなかで目にするとちょっと心が弾むようなものであれば、と思っています。

沖縄のものづくりについて感じること

−県外でのいろいろな経験を経て沖縄でものづくりをされていますが、なにか他の地域との違いや、感じることはありますか?

沖縄のものづくり自体は、需要も受け皿もすごくあると思います。でも、仕組みがうまく回っていないんじゃないか、と感じることがありますね。

たとえば時代とともに原料価格が高騰してきているのに、作り手側が値段をあげずにそのまま頑張ってるところも多いんです。需要はあるので、量を作らないといけない。すると一人あたりが作る量がすごく多くなってしまう…。余裕が無いから、若手が来ても育成できない。余裕が無いから、価格交渉もできない。それぐらい切羽詰まった状況があると感じています。
昔ながらの職人さんが本当に苦しい思いをしているところも、たくさんあります。

でも、みんなが協力してこの流れをちょっと変えてあげればうまく回り始めるんじゃないか、とも考えていて。
「人の手間がかかっている」という部分に対してもっと真剣に価値を見出して、売り手も買い手も、そして作り手も、もうちょっとオープンに話ができるようになってくるといいですよね。そのなかで自分ができることは、どんどんやりたいなと思っています。

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