【よみもの】素材の良さをデザインで引き立てる、天然サンゴのアクセサリー | 樂園百貨店

素材の良さをデザインで引き立てる、天然サンゴのアクセサリー

2017.12.18

PEOPLE

天然素材ならではの柔らかな風合いが魅力のサンゴ。アクセントの「赤」が印象に残るchuraumiのサンゴを使用したモダンなアクセサリーは、普段使いにもちょっとしたドレスアップにもぴったりです。素材の良さをデザインで引き立てるアクセサリー作家、清水一余さんにお話を伺いました。

【母の何気ないひと言がきっかけとなった、アクセサリーづくりへの道】

−アクセサリーを作りはじめたのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

小さい頃からものづくりが好きで、漠然とですが、将来はなにかものづくりをして暮らしていきたいと思っていました。それで高校はデザイン科を選び、卒業後は東京の美術大学に進学して彫刻を学びました。ガラスや粘土、木などの多素材に触れながらかたちを作っていくというのがすごく楽しくて、とても充実していましたね。

でも、彫刻の作品というのは基本的にすごく大きいものなので、ひとりで運ぶこともできないし、作った後はオブジェとして置いておくぐらいしか無くて、作品を人に知ってもらうチャンスがとても少なかったんです。
そんなときに、母が何気なく「どこでも持ち運びができて、たとえばポケットに入るような作品を作れないの? 」と口にしたんです。それが後々、アクセサリーという表現にたどりつくきっかけになりました。

大学を卒業して、貴金属素材を開発してアクセサリー加工などをしている会社に就職して、そこで初めて本格的なアクセサリーづくりに出会いました。
作ってみてわかったのですが、アクセサリーというのは自分の作品として身に着けられて、それを見た人からは「それどうしたの? 」「すごく素敵ね」という反応もあって。ああ、母が言っていたのはこれだ! って。アクセサリーって、今まで自分が気づかなかった表現のかたちなんだな、と気がついたんです。

会社では、シルバーをメインに、他の素材を織り交ぜたアクセサリーを作っていました。今のスタイルとはちょっと違う感じですね。
でも数年して、どうしても自分のアクセサリー、自分のブランド、というのを作りたいという意識が芽生えてきて。おもいきって、会社を辞めて独立することを決めたんです。

−その後、沖縄に移住し、お店をオープンすることになったんですよね。

そうなんです。実は、子どものころから沖縄に対する憧れをもっていて。というのも、祖母から旅行で沖縄を訪れた時の話をよく聞かされていたんです。すごくいいところだよ、大きくなったら絶対行きなさい、って。私は四国の海沿いで育ったんですけど、自分が育った海と沖縄の海もどこか似ている気がして、沖縄という存在をずっと身近に感じていましたね。《churaumi》というブランド名も、少しでも沖縄に近づきたい、という気持ちで名付けました。

東京にいた頃はお店を持っていなくて、百貨店のイベント出展だったり、セレクトショップに置いていただいたりしていたんですけど、まったくお客様の顔が見えない状態で、とにかくただ作るだけ。こんなのがあったらいいなとか、そういう声も全然聞こえない状況が長く続いて、だんだんもどかしく感じることが多くなっていました。

沖縄に移住を決意したのも、ちょうどそのころ。とはいえ、沖縄でもお店を持つ予定は無かったんです。だから沖縄に移住した後も、もどかしさを抱えたまま家でひとりもくもくと制作していて……。
そんなときに友だちが「いい物件があるよ」と空き店舗を紹介してくれたんです。ちょっと見に行ってみたら、市場の近くで雰囲気がとても良くて。それで、思い切ってお店を開くことにしました。
実際にお客様と接すると、どういうシチュエーションで使うとか、どういう方にプレゼントするとか、いろいろお話できて、ああ、これが自分のやりたかったスタイルなんだ! と心から実感しましたね。

【サンゴの魅力と、”アクセサリー”に込めたこだわり】

− churaumiのアクセサリーはサンゴがとても印象的ですよね。

もともと南天の実みたいな「⾚」がすごく好きだったので、⾃分のシンボルカラーとして作品のアクセントに⾚を取り⼊れようと決めていて。いろいろな素材を検討するなかで、宝⽯サンゴの柔らかい⾵合いの⾚がとても⾃分にしっくり来たんです。サンゴって種類や採れた場所によって少しずつ色あいが変わったり雰囲気が違ったりするので、素材としてのサンゴを研究していくうちに、だんだんハマっていってしまった……というのもあるかもしれません。

それから、サンゴには”身を守る”という意味があるんです。沖縄では昔から、女性がお守りとして身につけたり、王の冠にあしらわれていたりしますよね。もちろん迷信的なところはあると思うんですけど、自然から受け取ったものに意味を見出して装飾に使っていたというのは素敵だな、と感じました。

独立した当初は、日本と沖縄を融合させた「和モダン」をコンセプトに、アンティーク仕上げにしたシルバーにサンゴをあしらった作品をメインにしていましたが、現在はアイデンティティとしての「和」を大切にしながらも、それにとらわれることなく「世界の中の日本」だったり、沖縄に暮らす今の自分の感覚を大切にしています。金属素材もシルバーだけでなく、ゴールドや真鍮なども取り入れてトレンドも捉えながら幅広く表現するようになりました。

−作品には、どんな想いを込めているのでしょうか?

クオリティの高い素材を使って、さらにクオリティの高い加工を施すというのを心がけています。シンプルだけど華やかさもあって、モダンに見えて、普段使いでもよそ行きのシーンでも使える。だけど、見た目だけではなく使い心地がいいように、壊れにくいように、心を込めて細かいところまで気を使って制作をしています。

−ご夫婦でお店を営まれていると伺いましたが、ご主人の達也さんから見て、churaumiのアクセサリーの魅力はどんなところだと感じますか?

達也 そうですね。まずデザインを重視してやっていきたい、という想いがあります。たとえば「アクセサリー」と「ジュエリー」という2つの表現があると思うんですけど、私たちは「アクセサリー」ということにこだわっているんです。素材的に言えば、宝石サンゴや18金なのでジュエリーといってもいいと思うんですけど、やはり素材の良さだけではなく、そこに手を加えて作り出したかたちやデザインがchuraumiとしての表現になっているんです。

一余 churaumiのアクセサリーを見て、サンゴのイメージが変わったっておっしゃってくれる方も多いです。「今までこういうのは見たこと無くて新鮮」とか「これだったら着けたいわ」という言葉を頂くと、とても嬉しいですね。

達也 サンゴという存在はもちろん知っているけど、詳しくは分からないという方も多いんです。昔からサンゴのジュエリーやアクセサリーは作られているのですが、デザインが高級志向のものやフォーマルなものも多く、現代のスタイルには取り入れづらかったりしますよね。でも、サンゴは素材としてとても素晴らしいので、そこにデザインを加えて、モダンな感じで今の暮らしにマッチするかたちで提案できたらいいんじゃないかなと。素材の良さをデザインで引き立てる、というところを突き詰めて考えています。

【世界へ発信できる表現の場、沖縄でのものづくり】

−県外から移住されてきて、沖縄のものづくりについて感じることはありますか?

沖縄にはいろんな工芸があると思うんですけど、昔ながらの伝統を受け継ぐ方がいて、現代の生活に取り入れやすくアレンジした作品を作る方もいる。そのあたりは、他の地域と比べてすごく盛んなのかなと思います。
私のように移住者で、ものづくりをしている人も多いのですが、沖縄出身の人とはまた違った感覚で沖縄を捉えられる部分もあると思うので、それも新しい沖縄のものづくりの一面になっていると感じます。

それから地域的なことで言うと、沖縄は観光地として年間を通してたくさんの人が訪れるので、必然的に作品を見てもらうチャンスが増えますよね。たくさんの人の目に触れて、いろいろなご意見をいただけるということは、作品としてのクオリティがどんどん上がっていくということにつながると思います。

最近は沖縄を訪れる海外の方も増えているので、世界に向けて沖縄を、さらに言えば日本を発信することもできる。そういった意味では、沖縄は“日本の玄関口”としての役割を担えるというか、作品を世界に表現しやすい土地なんじゃないかなと思っています。

清水 一余

東京の美術大学で彫刻を専攻。大学卒業後、美術教員を経て貴金属会社に入社。新素材の企画開発プロジェクトに携わりながら 彫金技術を習得しアクセサリー作りをスタート。本格的な制作活動に専念する為に退社し、オリジナルブランドを発足。

現在は「churaumi」として、那覇の直営店やデパートリウボウの樂園百貨店リミテッドショップ、ポップアップでの出店など、沖縄のみならず全国で販売を展開中。

「毎日の暮らしがほんの少し楽しくなる」をコンセプトに、気取りすぎず普段使いのできる上質な大人の女性のためのアクセサリー作りを心がけている。