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2019.02.27

CAFÉ

【デザイナー×家具職人対談】樂園CAFÉオープンまでの裏話

昨年10月、デパートリウボウ初の直営CAFÉとしてオープンした、樂園CAFÉ。今回は、空間をデザインされた真喜志奈美さん、テーブルや什器を制作された大城琢麻さん、椅子を制作された西銘圭さん、そして樂園百貨店の大嶺佐紀子さんの4名にお集まりいただき、樂園CAFÉができるまでのお話を伺いました。


真喜志 奈美
沖縄県那覇生まれ。武蔵野美術大学でデザインを学んだ後、ドイツに渡りベルリン国立芸術大学の彫刻科大学院修了。1999年にデザイナーとして独立。ソウル、東京での活動を経て2014年に拠点を沖縄に移す。

大城 琢麻
東京都生まれ、沖縄県育ち。東京でメーカー勤務後、父が経営する有限会社大和産業に入社。工場、現場、営業など業務のすべてを経験し、取締役に就任。2014年〜自社ブランド「おめかし工場」を立ち上げ開発に携わる。

西銘 圭
沖縄県豊見城市出身。2008年沖縄県工芸指導所で木工を学ぶ。2012年ゆりあ木工房立ち上げ。2017年4工房共同経営店舗「家具家」オープン。沖縄県産材をメインに使用し、家具、小物製作販売などを行う。


中と外の境界を曖昧に。沖縄の伝統的な建築様式を取り入れて

―はじめに、樂園CAFÉの内装は、どういった構想から進んでいったのでしょうか?

大嶺 真喜志さんには、昨年7月の樂園百貨店リフレッシュオープン時から携わって頂いていまして、その延長線上としてCAFÉがある、というイメージです。リウボウにいらっしゃるお客様って、世代も住んでいる場所も国籍も本当に様々なので、ちょっと“パブリックな場所”というのを意識しました。

真喜志 この場所を見たときに、すごくいい場所だなと思ったんです。自然光もたっぷりはいって。店内からも外の景色が見渡せるように、とにかく風通し良く、見通しよくやろうっていう話をしていましたね。

大嶺 それであえて、テラスに面している窓側はちょっと雰囲気を変えたんですよね。

真喜志 メインテーブルのある空間を“室内”だとしたら、窓側は“外”と考えたんです。沖縄の伝統的な建築って外と中との境界がとても曖昧なんですよね。雨端(あまはじ)と呼ばれる長い庇のある縁側のような空間があったりして。その感じをちょっと意識しながら、砂浜に置いてあるようなビーチチェアをわざと部屋の中に持ってくることで、境界を曖昧にしています。

−沖縄の伝統的な建築や考え方のエッセンスが入っているんですね。

真喜志 そうなんです。たとえば壁は漆喰なんですが、サンゴを粉にして沖縄の方が開発した漆喰剤を使っています。ひとつひとつ、細かい所まですごくこだわって作りました。

希少な県産クスノキを使用した、カフェの主役

■どこを探しても無い…。苦戦した木材探し

−メインスペースには木のテーブルがどーんと中央にあって、とても存在感がありますね。こういったタイプの座席は沖縄ではなかなか珍しいのではないでしょうか。

大嶺 はい、あまり見かけないと思います。これも私たちからのリクエストで、沖縄県産の木材を使ったひとつの大きなテーブルをメインに空間を展開してほしいというお願いをしていました。

真喜志 テーブルの材料には沖縄で生まれ育ったクスノキを使っています。あと、椅子も半分は同じくクスノキを使ってもらいました。テーブルの制作は大城さんの会社、大和産業さんにお願いしました。

大城 今回はなんといっても、木材を集めるのが大変でしたね。全部沖縄の木材にしたいという指定があったもので、まとまった量を確保するのがなかなか難しくて…。そもそも沖縄の木ってあまり流通してないんですよ。結局、北部で木材を切り出して保管しているようなところに直接訪れて交渉して。それでも量が足りなくて、あっちこっち回ってかき集めてどうにか必要な量を確保できた感じです。

真喜志 なんかね、噂になっていたみたいですよ。リウボウがクスノキを買い占めてるぞ!って。

一同 笑

真喜志 それ聞いてちょっとヒヤッとしました(笑)

西銘 椅子もですね、全部で50脚弱ぐらいあるんですけど、半分はクスノキをつかいました。やっぱりクスノキの材料を集めるのが大変でしたね。椅子は見た目よりも意外と木材の量を使うので。

大嶺 別々で集めていらっしゃったんですか?

西銘 そうなんです。材木店を訪ねたら既に大城さんが訪ねた後だったりして、取り合いに…!というのは冗談ですが(笑)

大城 真喜志さんからどうしても沖縄県産のクスノキを使ってほしいと指定がありましたので。もう県内でかき集められるだけかき集めて、制作したという感じですね。

■年輪に刻まれた、木材ならではの豊かな魅力

西銘 クスノキは数が少ないというのもあるし、木が曲がって生えているんですよね。曲がっている幹からまっすぐの材を取るって本当に難しくて。

大城 加工してみてはじめて使える木、使えない木というのが出てきたりもするので、そのへんが木材の難しいところでもありますね。でもよくこれだけ、沖縄で生えていてくれたなと思いますよ。木って育つのに50年も60年もかかるじゃないですか。自然のなかで長い時間かけて育ってくれたんだなって。

西銘 建材として使えるまでに、100年かかるものもあるし。

大城 テーブルの断面を見ると年輪があるんですが、この線が一年、一年ですからね。一年でこれだけしか育たないってことなんです。そういう有り難みを分かった上で使うと、人の生活も心も豊かになってくるのかなって思います。

■業界のタブーを破ってでも、デザイナーのイメージを表現する

―いくつもの板をつないでひとつのテーブルに仕上げていますが、天板の木目の組み合わせもすごく悩まれたのではないでしょうか。

大城 細かいことを言うと、本当は木には表と裏があるんです。通常、仕上げ面には木表を持ってくるのが基本なんですが、このテーブルが表、裏、裏…となっているのは、木目の出方で悩んだ末に木を逆側にして繋ぐというのをやったわけです。普通はこんなことしません。私たちの業界ではやっちゃいけないことなんです。

西銘 そうなんですよね、ぼくもまったく同じです。裏表を変えたり、逆さまにしたり。いろいろ組み合わせてみて、落ち着く木目を選んでいます。

大城 そこに職人としての葛藤があるんですが、業界の常識をとるか、デザインの意匠的なものをとるかで悩んで、後者をとったわけです。私たちは、デザイナーさんのイメージを、図面に現れてないところまで考えてものを作らないといけないと思っているので。当然、ぜんぶ木表で作っちゃえば考えないでいいし楽なんですけど、タブーを破ってでも相手の希望に沿う。そこはちょっとした配慮ですね。

真喜志 もう、涙が出てきます!

西銘 沖縄の木は同じ品質のものがあまり無い。でも良く言えば、それぞれ個性があって、それぞれの表情があるんです。その表情を活かすのが僕らの仕事だと思っているので、そこにはけっこう時間をかけていますね。

■“使い捨て”ではない、大切に永く使えるものづくり

―さきほど、いすの半分がクスノキと伺いましたが、残りは別の木をつかったのですか?

西銘 はい。もう半分は、イタジイという木で作っています。

真喜志 座面にはペーパーコードといって、紙を固く撚ってそれを編み込んだものを使っています。元々は北欧のほうではじまった技術なんですけど、沖縄の気候にも合ってるんじゃないかなって。

西銘 長年使っているうちにだんだんお尻に馴染んで、さらに座り心地が良くなってくると思います。もし座面が傷んできたら座面だけを編み直して、また新品のようにして使ってもらえるんです。修理しながら、永く使うことを楽しんでもらいたいですね。

これまでの百貨店のイメージを超える、新たなチャレンジ。

−カウンター席やレジカウンター周り、什器類にはラワン材という木材が使われているそうですが、メインのテーブルやいすとはと材質がちょっと違いますね。

大城 ラワンって一般的な名前で言うとベニヤなんですよ。ベニヤ板ってあんまり重厚感がないイメージがあるかもしれませんが、そこを美しくデザインするのが真喜志さんの真骨頂なんです。とはいえ、普通は「ベニヤじゃ嫌だ」って言うと思うんです。それを採用するリウボウさんの懐の深さによるところが大きいですね。

真喜志 リウボウさんの懐の深さで言えば、このビーチチェアを採用したこともちょっと驚きましたね。百貨店でこのいすを採用するってけっこう勇気のある感じだなって。

大城・西銘 そうですよね!

大嶺 とにかく樂園百貨店も樂園CAFÉも、“チャレンジ”ということをいちばん大事にしているので、そこは作り手さんのチャレンジにのっていこうかなというのもありました。

樂園CAFÉから始まる、新しいストーリー。

―みなさんの想いや技術が合わさって、いよいよこの樂園CAFÉが完成したわけですが、仕上がった空間を見てどう思われましたか?

真喜志 私、自分の仕事にはあんまり感動はしないんです。でも、今回はちょっと感動しちゃったかな。個人的な話なんですけど、小さい時この近くに住んでいたんですよ。0歳のときからお母さんに抱っこされてリウボウに来て、店員さんに可愛がられて。そうやって育ってきて、そのあと県外や海外に出て何十年も経ってやっと帰ってきて、リウボウさんのお仕事をさせていただいて。意味のあることがひとつできたのかなって。この先自分にとって必ず糧になるし、意味深かったと思います。

大嶺 これまで樂園百貨店側からテラスまでは壁が二枚あったんですが、それがひとつの大きな空間として仕上がって、「抜け感」をすごく強く感じましたね。あ、これならここからリウボウ全体を盛り上げることができるな、と言う確信が持てました。

大城 私は、ほっとした…ですかね(笑)

西銘 お店に持ってきて、そこで初めてテーブルとイスを合わせましたもんね(笑)

大嶺 そういえば最後にちょこっとテーブルのサイズを変えてもらったじゃないですか。あれって、大丈夫だったんですか…?

真喜志 最後に10cmぐらいテーブルの幅を大きくしなくちゃいけなくなったんですよね。最後の最後で。大城さん、すみません!って。

大嶺 大きなテーブルなので隣や向かいに知らない人が座るというと考えたら、少し隣との感覚が近いかもしれないな…となったんです。

真喜志 もう、怖くて大城さんに聞けなかったですよ。

大城 え、いまさら?(笑)

西銘 たった10cmですけど、本当に大変だったと思いますよ。さっきお話ししていたように、クスノキは本当に使える木が少ないので。

真喜志 引っ張っても伸びないしね。

大城 ハードルは高かったですね。

大嶺 でも、最後まで諦めずに対応してくださったから、素晴らしい店舗になりました。無事に完成して、本当によかったです。ありがとうございました。

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